「掃苔」は歴史を学べる宝庫

「掃苔」(そうたい)。近年ではあまり使われなくなりましたが、読んで字のごとく「苔をきれいに掃き清める」こと、つまりお墓参りのことをさす言葉です。また、ご先祖のお墓参りに限らず、歴史上の人物や著名人のお墓を詣でる趣味を持つ人を掃苔家と呼びます。

大学受験まで歴史が嫌いであった私が、大学生の時にアメリカ留学をして、日本を離れたからこそ日本の歴史や日本人の奥深さに興味を持ちました。帰国後、たまたま石材屋でバイトをしたご縁で、東京都府中市にある多磨霊園内の著名人の散策が始まったのが23年前(1997年)。
散策した人物たちを紹介する「歴史が眠る多磨霊園」のホームページを開設(1998年)。以降、22年目を迎える今日まで毎週欠かさず多磨霊園に眠る著名人を掲載し続け3,000人。この中から特筆すべき人物をチョイスし、203名に厳選してまとめた著書『歴史が眠る多磨霊園』(花伝社)を昨年末に刊行いたしました。

学生時代は歴史は暗記科目と捉えていましたが、掃苔を始めるようになり歴史の捉え方が変わりました。皆様も歴史をこう考えてみるのはいかがでしょうか。
歴史はヒストリー(History)。「Hi + story」。すなわち、ハイスペックなストーリー。この人がなぜこの時にこんなことをしたのか。そして人と人の繋がり。時代の背景もあります。その人その人の「人物史」を知ることがドラマチックで面白い。

日本人は良いも悪いも「今」を基準で物事を考えてしまう癖があるようです。そのお陰様で、新しいことを貪欲に吸収ができ、未来志向で発展を遂げてきました。一方で、過去を大事にする気持ちはあるにせよ、「今」を基準に過去を見てしまう癖もまたあるようです。歴史と対峙するときは、今のフィルターで過去を見るのではなく、できるだけありのままを受け止め、あの時代や背景の中で自分だったらどうするのかを考えることが大事だと感じます。
お墓は歴史を肌で感じるきっかけであり、そこに眠る著名人たちの人物史より、これらの人物たちが当時の状況面・環境面において、 何を考えどうしてそのようなことが起きたのかを学ぶことが「歴史が眠る多磨霊園」の狙いです。
『歴史を学ぶのは、過去の事実を知ることだけではない。歴史を学ぶのは、過去の事実について、過去の人がどう考えていたかを学ぶことだ』

東京都府中市にある多磨霊園は東京ドーム27個分に相当する広大な公園墓地です。そこには40万の御霊が眠っています。そして文学者、政治家、芸術家、学者・文人、実業家、芸能人、スポーツ選手、軍人から反戦平和に生きた人まで、明治から平成期に活躍した著名人の墓所をきっかけに、コラム形式の人物史として86作品、203名を紹介し、その生涯と生きた時代に迫ります。
是非ご興味ある方はお手に取っていただけましたら幸いです。

著者 小村大樹

「歴史が眠る多磨霊園」
出版元:花伝社  価格:1800円(税別)
ホームページ:http://www6.plala.or.jp/guti/cemetery/
アマゾンで購入:https://www.amazon.co.jp/歴史が眠る多磨霊園-小村-大樹/dp/4763409069/

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