今回のテーマは「心から叱る」です。
ご覧くださいませ。
陽人の法話:心から叱る 私は、東京の多摩ニュータウンの団地で育ちました。
中学生の頃、職場体験でお世話になったのが、高幡不動尊金剛寺の近くにある和菓子店の「高幡まんじゅう松盛堂」さんでした。そのようなご縁を懐かしく思いながら、高幡不動尊金剛寺の前貫主であられる故・川澄祐勝猊下のご尊著「叱られる幸せ」を拝読いたしました。
川澄猊下は、このご尊著の中で、最近よく耳にする「褒めて伸ばす」「褒め育て」という事への問題提起をされておられます。
人間は、生涯間違いを犯さずに生きることはできない。
その間違いをしっかりとただしてくれる人間、教えてくれる人間が必要なのだとおっしゃいます。
私は、四人きょうだいの末っ子として生まれましたので、両親は私に対して、他のきょうだいに比べて接し方が甘かったと思います。
七つ年の離れた兄が、私を見て、そのように甘やかされて育ったのでは、いけないと思ったのでしょう、何かにつけ大変厳しく私を叱ってくれました。
小学生の時、兄に憧れて野球を始めたのですが、その指導にいたっては、今考えても厳しすぎるのはないかと思うほどです。
高校野球をしていた兄は、そのレベルの知識で、私に教えてくれていたのですが、高度すぎてそれをその時に理解するには無理がありました。
それなのに恐怖を覚えるほどの叱り方で指導するのです。
しかし、兄が私のことを思って、情熱をもって真剣に教え、叱ってくれていることは、伝わりました。
そして、大人になってから兄に言われるのです。
「お前を育てたのは俺だ」と。本当にそうだと思います。
子どもの時は、とてもそのようには思えなかったのですが、今では、度々私を叱ってくれた兄に感謝しています。
私の育った団地では、幅広い年齢の子供たちが大勢入り混じって遊んでいました。
そのような中で、年上のガキ大将に、怒鳴られることもありましたし、屋根の上に登ったりして、近所の恐いおじさん、おばさんに怒られることもありました。
自分の両親以外の人に、叱られる体験も多かったように思います。
そして、一番仲良く、長い時間を共にした友人は、いつも私の間違いを躊躇なく指摘してくれました。
醍醐寺の修行道場でも、寮監先生をはじめ、多くの先輩僧侶に毎日の如く、厳しく叱っていただきました。
いずれの時も、叱られた後は、しばらく落ち込みますが、振り返ってみて気づかされるのは、どの方も私のことを思って、叱ってくださっていたということです。
私は、昔から、人一倍頼りないためか、様々な人から至らぬ点を指摘されることが多いのです。
失敗も多く、指摘されることも多いことを、恥じているのですが、川澄猊下の「見込みがない人は、叱られない」というお言葉に出会い、自分の指摘されやすさを少しだけ肯定的に捉え直すことができました。
しかしながら、そのような未熟な私でも、年々指摘されることが少なくなってきているように感じます。
それは、私が成長したからではなく、大人になると当たり前のことは、一々指摘してもらえなくなってしまうためでしょう。私が間違いや恥ずかしいことをしていても、周りの人に呆れられてしまうか、軽蔑されてしまうかで終わってしまうことも多いのだと思います。
そのようなことを思えば思うほど、子どものうちに、しっかりと叱られるという体験をしておくことが大切なのだと感じます。自分が親の立場になった時、今度は叱る側になっていることに気づかされます。
叱ることは、叱られることよりも、何倍も難しく、大変なことなのだと、強く感じます。
川澄猊下は「『うまく』叱ろうとしてはいけない。『心から』叱ることが大切である。」とおっしゃいます。
たとえ言葉が乱暴であっても、心から相手を思って、真剣に叱っているのだという渾身のエネルギーが伝わることが大切なのだと。そうすれば、叱られた方は、何故叱られたかを自分で考えるようになる。
それが大切なのだとおっしゃいます。 私もこの部分が大切なのだと思いました。
いくら相手のことを思って叱っても、最終的には、本人が自分で自分の過ちに気づかなければならないのです。
叱ることは、自分で気づく手助けをしているのです。
だからこそ、川澄猊下は、「時には、理屈抜きで叱ることも大切だ」とおっしゃいます。
どこがいけないのか、懇切丁寧に説明などせず、叱る。叱られた人は、叱られた理由を自分で考える。
そのことで頭が鍛えられ、何があっても発想の転換ができるような柔軟性を身に着けることができるのだと書かれていました。
【毎月、須磨寺にて法話をさせて頂いております】
毎月18日の10時からの護摩祈祷と写経会、20日と21日は11時半から奥の院にて、そして、21日は14時から護摩祈祷をさせて頂き、法話をさせて頂いております。
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※こちらの記事は、小池陽人様から許可を得て転載させていただいております。
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