2025年 第二十九回コラム  身近な仏教用語

日常用語、元をたどれば仏教用語たくさんあります。

 

普請(ふしん)

家を建てたり改築したりするとき、よく「普請」という言葉を使います。「道普請」という言葉もあります。普請とは、建築とか土木工事のことを言うようです。

普請は、仏教では、功徳を普く請いねがうという意味で、ひろく寄付をつのり、労役に従事してもらって、お堂や仏塔などの造営、修理をすることなのです。

それがその後、一般家庭の家屋などを建築したり修理する場合にも、使われるようになりましたが、最近では、住宅ローンで資金を借り入れて建築することが多くなったせいか、あまり普請という言葉は聞かれなくなりました。

学生(がくしょう)

仏教では、学生は「ガクショウ」と読み、学匠とも書きます。もとは寺院に奇寓し、仏教以外の学問を学ぶ者に名付けられたようですが、日本仏教会では、仏教を学ぶ者に用いています。

真言宗の金剛業学生、胎蔵業学生や、海を渡って大陸に学ぶ人を留(る)学生、学んで帰国した人を還(げん)学生という具合です。

学者も学徒も、もともと同じ意味でした。比叡山を開いた伝教大師は、山内で学問をする学生たちの学則ともいえる『山家学生式(さんげがくしょうしき)』を著しています。

比叡山の衆徒は、学生である大衆と、一山の雑務を担当する堂衆とに分かれていました。

親鸞聖人は堂僧であったと伝えられています。常行堂に奉仕しながら、常行三昧を修める不断念仏僧だったようです。

いずれにしても、学生とは学問に従事する生徒のことですから、しっかり学問してくださいよ。

蒲団(ふとん)

坐禅(ざせん)の時などに、お尻に敷く敷物があります。直径30センチぐらいの円形でその中に蒲(がま)がつめられているものです。蒲の葉で編んだものもあります。これが、[蒲]の葉の[団]円、つまり、文字通り蒲団なのです。

現在、皆さんが使用されているふとんは、布団と書いて寝具です。敷きぶとんとか、掛けぶとんとか呼んでいます。そして、座る時に使うものには、わざわざ座ぶとんという名をつけています。しかも、常識的には四角形なのです。仏教の用具だった丸い座ぶとんが、四角形になり、いつの間にか寝具となっていったのですから、この変化は、まことにおもしろいですね。

縁起(えんぎ)

チューリップの花は、その球根から咲きます。球根が原因(因)で花は結果(果)です。しかし、球根だけでは花は咲かず、温度・土質・水分・肥料・日光・人間の細心最新の手入れなど、さまざまな条件(縁)が球根に働いて花は咲くのです。

このように、すべてのものには、必ずそれを生んだ因と縁とがあり、それを因縁生起=縁起というのです。現実には、因と縁と果とが複雑に関係しあい影響しあって、もちつもたれつの状態をつくっています。『阿含経』に「これある故にかれあり、これ起こる故にかれ起こる、これ無き故にかれ無く、これ滅する故にかれ滅す」とあります。

日常、よく「縁起が良い・悪い」という言葉を聞きます。吉凶のきざしという意味なのでしょうが、本来は、他の多くのものの力、恵み、おかげを受けて、私たちは生かされているという、仏教の基本的な教えなのです。

 

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