※写真は「Zoom」による傾聴のイメージ(感染症と闘う医療従事者の話を聴く会提供)
新型コロナウイルスへの対処で疲弊した医療従事者に安らぎの場を提供しようと、上智大学の研究者らが「感染症と闘う医療・介護従事者の話を聴く会」を立ち上げた。心理専門職や臨床宗教師=用語解説=がテレビ会議システム「Zoom(ズーム)」で相談を受け付け、傾聴を通じて悩みに寄り添う。コロナ禍で社会の分断が進む中、職種を超えた支え合いが期待されている。(安岡遥)
経験踏まえ、医師が始める
世話人代表の井口真紀子氏は、上智大学大学院実践宗教学研究科で心のケアを学んでおり、在宅医療や家庭医療を手掛ける医師でもある。自身の経験や周囲の声から医療従事者の窮状を知り、「心の重荷を降ろす場を作りたい」との思いで会を設立した。
医療現場では感染防止のため、最小限の時間で診察が行われている。患者とは距離をとり、会話も最低限。面会の受け入れを停止した緩和ケア病棟で、一人きりで亡くなっていく患者を見送った医療従事者もいる。こうした接触の制限が、患者との心の交流まで制限してしまう。
井口氏は「家庭医療や緩和ケアは、治療以外での触れ合いも大切にする分野。十分なケアが行えていないと感じ、葛藤する医療従事者が多い」と分析する。
認定臨床宗教師として傾聴に当たる高野山真言宗の僧侶、井川裕覚氏は「答えの出ない問題と向き合っている医療従事者にとって、話すことを通じて自身をケアする時間は極めて重要」と話している。
臨床宗教師はチームの一員
「なぜ、私が死ななければならないのか」「神も仏もない」―。患者の吐き出す苦しみは、ときに不条理だ。治療の専門家である医師や看護師が満足な答えを示すことは、難しい。臨床宗教師は、そのような叫びにひたすら耳を傾け、苦痛を分かち合う。
向き合う相手は、患者だけではない。治療に当たる医師や看護師、患者の生活を支えるソーシャルワーカーなど、共に働く医療スタッフの悩みに寄り添うのも臨床宗教師の役割だ。
コロナ禍の今、医療従事者の抱えるストレスは枚挙にいとまがない。感染の危険と隣り合わせの労働環境、家族や友人を感染させてしまうことへの不安。町へ出れば、心ない言葉や交通機関への乗車拒否など、いわれのない差別を受けることもある。
龍谷大学大学院で臨床宗教師の研修を担当する鍋島直樹教授(実践真宗学)は、「感染症と闘う医療・介護従事者の話を聴く会」の活動について「医療者と宗教者の日頃の信頼関係のたまもの」と分析する。「医療従事者にとって、臨床宗教師はチームの一員。同じ職場で悩みを分かち合ってきたという信頼があるからこそ・・・
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