【文化時報提供】盗難仏を展示 “奥の手”使う博物館の困った事情

和歌山県立博物館(伊東史朗館長)は、2010~11年に盗難に遭って以来所有者が分からない「阿弥陀如来坐像」を今年4月にスポット展示した。所有者の手掛かりを募るとともに、文化財盗難の現状を知ってもらい、盗難対策の強化につなげたいとしている。

展示された仏像は、高さ55・8㌢の一木造り。盗難事件後、13年から同館が保管している所有者不明の文化財43点の中では、最古かつ最大の仏像という。

像自体は平安時代中期の作とみられるが、光背と台座は1787(天明7)年に造られたことが分かっている。台座の銘文に「野上下津野」の地名が見られ、現在の和歌山県海南市下津野近辺に伝わった可能性がある。

展示されている阿弥陀如来坐像と大河内智之主任学芸員

展示された盗難仏の阿弥陀如来坐像と大河内智之主任学芸員

同博物館の大河内智之主任学芸員(日本美術史)は「美術品や文化財としての価値はもとより、地域の信仰の歴史を背負ってきた点からも貴重な仏さま。一日も早く元の所有者にお返ししたい」と話している。

地域の信仰どう守る

仏像の盗難は、地元住民にも暗い影を落とす。

「盗難事件が起きているとは聞いていたが、『まさか自分たちのお堂が』という思いだった」。和歌山県高野町花坂地区の前区長、上田静可さんはそう振り返る。

上田さんが世話役を務める花坂観音堂では、江戸時代の作とみられる阿弥陀如来立像が2011年1月に盗まれたことが分かり、現在も行方が分かっていない。

当時、お堂の防犯対策は南京錠による施錠のみ。賽銭(さいせん)の盗難もたびたび発生していた。付近の民家からは死角に当たり、管理を担う住民も高齢化していた。

和歌山県内では2010年から翌年春にかけ、山間部の無住寺社やお堂を中心に、仏像172体と仏具・神具などが盗まれる事件が発生。これ以降も無住寺社を狙った盗難事件が相次ぎ、17~18年には和歌山市など3市の10カ寺で仏像60体以上が、19年にも田辺市の2カ寺で本尊が盗まれた。オークションサイトで転売され、いまだに行方が分からないものが大半を占めている。

和歌山県立博物館の大河内智之主任学芸員は、相次ぐ文化財盗難の背景について「過疎化や高齢化に伴う無住寺社の増加、手軽に使えるインターネットオークションの普及が重なり合い、犯罪を生みやすい環境になっている」と分析する。

事件当時、被害者の多くが・・・

 

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