【文化時報提供】オウム25年③外側だけ残る伝統教団 瓜生崇氏(真宗大谷派)

※2020年3月に行ったインタビュー連載を再構成しました。

真宗大谷派玄照寺(滋賀県東近江市)の瓜生崇住職は、オウム真理教の後継団体「Aleph(アレフ)」などの脱会者支援を手掛けてきた。自身も「浄土真宗親鸞会」の脱会者。在家だった学生時代に入信し、熱心な布教活動を行った経験を持つ。現在は伝統教団の一員として、自坊の門徒や教えと向き合う瓜生住職は「伝統教団こそ宗教の危機を招いている」と話す。

中面・瓜生さん2小

何が「良い宗教」なのか

――カルト視される教団の入信者と数多く向き合ってこられました。

「アレフや浄土真宗親鸞会で、いろいろな入信者を見てきたが、さまざまな宗教のあり方を知った上で、既存の宗教に飽き足らない人が多かった。『阿弥陀さまがすくってくれます。安心ですよ。南無阿弥陀仏』と聞いて納得する人は、そもそもカルト視される教団には入らないという印象だ」

――オウム真理教に対する伝統教団の見方はどうでしょう。

「問題意識や、人生に対する問いが伝統教団の担い手には薄い。伝統教団側は『オウムは悪い宗教で、我々は良い宗教』と思っているかもしれないが、人間の根源的な問いに答える形で伝道がなされているかという点では、むしろオウムの方が『良い宗教』で、伝統教団の方が『悪い宗教』と言えないか。そもそも良い宗教と悪い宗教が簡単に分けられると思う心自体が、オウムの事件を生んだのではないか」

《現代の伝統仏教教団では、寺院の基本は世襲制。僧侶は寺に生まれ、当たり前のように教えに触れるが、瓜生氏はその〝当たり前〟の危うさを指摘する》

――伝統仏教教団の僧侶たちには、何が足りませんか。

「例えば、地下鉄サリン事件の実行犯となった林郁夫受刑者(無期懲役確定、服役中)は、いろいろな新宗教を巡って、自分や人が救われる教えとは何かを真剣に求めた。しかし伝統仏教教団の大多数の僧侶たちには、宗教遍歴すらない。そこの枠から出て行こうともしない」

「エホバの証人の信者たちにはノルマがあり、一軒一軒回って伝道している。伝統教団の人たちは『教団がなくなったら、経済的に困る』程度の危機感だ。そんなぐらいの『一生懸命』では、カルトの入信者たちとはすれ違う。『伝統教団が教えをもって教化すればオウムに入る人が少なくなる』というのは寝言だ。何も要求されず何も与えない、ぼんやりした宗教が良いというなら、それこそ宗教の危機ではないか」

伝道者は道を求めよ

《瓜生氏が信仰する浄土真宗の教えは、一般的に修行などの身体性を伴わない。一方で麻原彰晃(本名・松本智津夫)元死刑囚の率いるオウム真理教は、ヨガを基に独自の修行を考案し、信者を増やしていった》

――伝統仏教教団の教えは、悩み苦しむ人に応えられないのでしょうか。

「伝統仏教教団は、オウムに入信するような人々の悩みに応える教えを持っている。だが、教団の中にいる人たち自身が、教えを求めていない。求めているのは、耳に心地良い言葉と、懐古主義的なヒューマニズム、そして『いのちの大切さ』ぐらいだ」

「教えに説かれることが本当にあるのかと疑問に思った人は、何らかの身体性を求める。浄土真宗親鸞会などにも身体性がある。信心をいただいて救われるということが、体験を通じて明確に自覚できると彼らは言う」

――身体性に頼ると危険ではありませんか。

「身体性で宗教の真実性を自覚してしまうと、体験そのものを握り締めてしまう。これはオウムが陥ったわなでもある。体験そのものを真実にしてしまうと、『麻原元死刑囚が正しい』と逆の真理を語り始める」・・・

 

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こちらの記事は株式会社 文化時報社 様 から許可を得て転載させていただいております。

 

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