第四十六回コラム「法華経物語Part6」

弟子たちの喜び

 

 お釈迦様を仰ぎ見る大衆に混じってまだ予言を授けられていない二人の僧がいました。十大弟子の一人でお釈迦様のいとこにあたる阿難と同じく十大弟子でお釈迦様の息子の羅睺羅でした。

 お釈迦様は二人にも予言を授け始めました。

 「阿難は六十二億のほとけに仕えた後、完全なさとりを得た後に、おびただしい数の菩薩たちを教え導き、菩薩たちにも完全な悟りを得させるだろう。」

 このように素晴らしい予言は今まで菩薩に対してもされなかったのに、なぜ菩薩よりおとっている直弟子たちにこのような予言をするのだろうと疑問を持つ弟子がお釈迦様に尋ねました。

 お釈迦様は、

 「実はわたしと阿難はすでに前世において空王仏のもとで発心したもので、阿難は過去の世でできるだけ多くのほとけの教えを聞きたいという願いを起こし努力してきた。未来にも多くのほとけの教えを聞こうとするだろう。そして菩薩たちをさとりに導き努力すれば、必ず来世にほとけになるだろう。」

 と述べたところ、弟子たちは大いに納得しました。

  お釈迦様はさらに続け、

 「羅睺羅よ、おまえも来世には必ずほとけになれるだろう。これからも常にほとけの息子として生まれ、この果てしない宇宙に浮かぶちりの数にも等しい無数のほとけを敬い褒め称えるだろう。そして阿難がほとけになった時と同じようにその息子として生まれ、そこでの修行によってさとりを得ることができるだろう。」

 二人はこの予言を聞き大いに喜び、さとりを開くためにさらなる修行を重ねることを誓うのでした。

 

 薬王菩薩

 

 お釈迦様は説法を聞いていた薬王菩薩をはじめ多くの神々に教えを授けました。お釈迦様は

 「法華経のたった一つの言葉を聞いて、少しでも喜びの気持ちを持った者は必ずほとけになることができる。」

 「また、ほとけが入滅した後で、この経を聞いて喜びの心を起こす者、あるいはほんの一言口に唱える者もその功徳でほとけとなることができるのです。ましてやこの経を世間に広めたり、書き写したり、あがめ尊んで花や香木などを供養する者たちは、必ず完全なさとりを得ることを保証しましょう。」

と言いました。

 薬王はお釈迦様に

 「法華経がそれほど尊い経典でしたら、もしそれをそしるような者がいたらどういうことになりましょうか。」と尋ねました。

 お釈迦様は、

 「もしここに一人の悪人がいて、極めて長い期間ほとけを罵り続けたとします。しかしそれよりも法華経を読誦する人たちにたった一言、悪口を言った罪の方がはるかに重いのです。法華経を読誦する人はほとけと同じだと考え、そのような人には合掌し供養すべき人なのです。」

 お釈迦様は続けて薬王に

 「ほとけが入滅した後にこの経で生きとし生けるものを導きなさい。経を書き写し、口に唱え、あつく敬い人々に説き聞かせることで、彼らはほとけの着ている衣服で包まれて保護され、十万の世界の諸仏によって見守られるのです。」

 薬王はお釈迦様に、

 「ではもし、ほとけが入滅されたらわたしたちはどのように教えればいいのでしょうか。」

 と尋ねました。

 「ほとけの部屋に入り、ほとけの衣服を着て、ほとけの座に座って説かねばなりません。ほとけの部屋とは生きとし生けるものを哀れみいくつしむ心を持つこと、ほとけの衣服とは決して腹を立てず心おだやかにして衆生と接すること、ほとけの座とはすべてはこの世に実体がないという空をさとることです。」

 「薬王よ、もしそのようにしてこの経を説こうとすれば、わたしは他の世界に住んでいても神通力を使って、必ずその教えを聞くものを集め聞きに行かせるでしょう。そして教えを説こうとするものに姿を見せて、はげまし、助け、守るつもりです。」

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