第七回コラム「仏像について」

仏像が出現したのはいつ?

 

皆さんもお寺でよく目にする仏像。その仏像がいつから作られたかご存知でしょうか。

今回は仏像について説明していきたいと思います。

 1 仏像が作られる前の話

 2 仏像の起源について

 3 仏像の種類

 

 1 仏像が作られる前の話

 お釈迦様が亡くなられると、その遺骨は8つに分けられました。遺骨を祀るために仏塔が建てられ、人々は仏塔を礼拝し、お釈迦様とその教えをしのんだと言われています。

 仏滅後200年ほど経過した頃、初めてインドを統一したアショーカ王が、各地に八万四千と言われるほどの多数の仏塔をつくり人々に巡拝を進めました。仏塔ができるまで人々は出家者に供養することでしか仏教に参加することができませんでした。アショーカ王によって多数の仏塔ができたことで、多くの人々が仏塔を拝むことができるようになりました。その仏塔崇拝が一つの核となり新しい仏教が生まれて行くことになります。仏塔は時代が下るにつれて彩飾美化され、門や欄楯ができ、そこに仏伝図や説話図が刻まれるようになります。在家信者を中心にこれらを礼拝対象とすることで仏教の信仰を深めてきました。しかしそこにはお釈迦様の姿が刻まれることはありませんでした。

 それはなぜかというと、お釈迦様は阿羅漢(一切の煩悩を克服した聖者のこと)だったからです。お釈迦様は六道世界から解脱しているので、当時は阿羅漢の姿を形にすること事態がタブーだったのです。なぜタブーなのかというと、インドでは善を積んだ死者の霊魂は火葬の煙りによって天界にいくと信じられています。天界に行くときにこの世から全ての痕跡を消さなければまたこの世と関わることになと言われていたからなのです。

 

 2 仏像の起源について

 今までタブーとされていたお釈迦様の像が刻まれたのは、紀元前1世紀から2世紀初頭にかけてガンダーラとマトゥーラの地で誕生したと言われています。

 ではなぜ、仏像は作られたのでしょうか。ガンダーラではお釈迦様は阿羅漢ではなく「如来」であるとされたからです。阿羅漢は人間がなるものと言われており、「如来」は真理の世界から人々を救うためにこの世にこられた方、つまりお釈迦様だと考えることにより如来像が作られたと言われています。

 一方マトゥラーでは、如来像と呼ばず菩薩像と呼ばれていました。土地柄もあり、インドの宗教伝統から自由になれず、ガンダーラで作られた如来像も禁止されていました。そこで菩薩像と呼ぶことで、「如来像をつくてはならない」というタブーを逃れていたのです。

 それにしてもなぜタブーを破ってまでも如来像がつくられたのでしょうか。お釈迦様亡き後、出家者たちは阿羅漢を目指して修行を行っていました。もちろん簡単になれるわけではないのですが、阿羅漢になればそこで終了となります。昔の小乗仏教は卒業のある仏教でした。権威ある目標が設定されると人は目標に向かって努力しますが、その反面目標に到達すると驕りと慢心が生じます。そこで永遠に到達できない目標に向かって歩み続けることこそに意義があるのです。その思想を育んだのは在家信者中心の仏教徒である大乗仏教者でした。その中から小乗仏教に飽き足らない大乗仏教の修行者たちは、山林深くで瞑想することにより如来の世界に飛び込みました。時間と空間を超え如来の説法を聴き、人々に伝え如来像をつくることにより、人々が如来に近づけるようにしたのです。真理の世界から衆生を救うためにこの世に来てくださった如来。このような見方が生まれたことにより「阿羅漢の像を作ってはならない」というタブーから解放されたのです。

 3 仏像の種類

 ここからは代表的な仏像の種類についていていきましょう。

1 如来像

 ・釈迦如来    仏教の開祖のお釈迦様のこと。

 ・薬師如来    薬師とは病を治す医師という意味で如来になる前の修行僧の時に「人々の病や体の障害を除く」という誓願をたてたことがその名の由来です。

 ・阿弥陀如来   極楽浄土にいらっしゃる如来で、この如来の光は無限でありその寿命は無量であることから「無量寿如来」「無量光如来」と呼ばれることもあります。

 ・毘盧遮那如来  三千大千世界という大宇宙で法を説いている如来。

 ・大日如来    きらびやかな衣装と装飾品を身にまとう如来で、この世で実践するための在家の姿という考え方、あるいは大日如来をほとけの王とする考え方の現れです。

2 菩薩像

 ・聖観音菩薩   単に「観音さま」といえば聖観音のことを指し、場合によっては三十三もの姿に変身して衆生を救います。

 ・十一面観音菩薩 十一の顔をもち、その顔はそれぞれ違った表情で衆生を見つめています。これは十一の顔を使い分けて衆生を救うということを示しています。

 ・千手観音菩薩  たくさん手が持つ持ち物は、ほとけの様々な救いを象徴しています。

 ・弥勒菩薩    お釈迦様が亡くなった後五十六億七千万年後に人間界に生まれ悟りを開き衆生を救う菩薩。

 ・地蔵菩薩    菩薩でありながら像の姿をしており、弥勒菩薩の出現までほとけに代わって人々の苦しみや悩みを救済する菩薩。

3 明王像

 ・不動明王   明王のトップ的存在で、恐ろしい形相は衆生を叱り飛ばしてでもほとけの世界へ導いていく力強さを表しています。

 ・烏枢沙摩明王 火の神で、世の中の一切の穢れや悪を捨て去り清める力を持っている。

 ・愛染明王   ものごとをむさぼり愛し、それに染まりきってしまう愚かな心そのものがさとりの心になると示している。

 ・孔雀明王   人々を苦痛や災害から守ると信じられている明王。

 ・大元帥明王  もともとは悪鬼でしたが仏教に取り入れられ護法神となった明王。

4 天部像

 ・梵天    古代インドのバラモン教の主神のひとりであるブラフマンのことで、仏教に取り入れられてからは仏教を守護する神とされ釈迦如来に仕えている。

 ・帝釈天   インドの雷の神(インドラ)で、仏教の護法神となり四天王を支配下にしています。

 ・四天王   帝釈天に使える4神で、東を守る持国天、南を守る増長天、西を守る広目天、北を守る多聞天の事を言います。

 ・阿修羅   インドの神アスラで、もともとは正義の神でしたが正義に固執するあまり他人を許すことができず、阿修羅は戦いの権化となった。

 ・吉祥天   ヒンドゥー教の女神であるラクシュミーのことで、繁栄・幸運の女神とされる。

 ・弁財天   ヒンドゥー教の女神であるサラスヴァティーのことで、学芸や音楽の神様とされる。

 ・大黒天   ヒンドゥー教のシヴァ神の化身であるマハーカーラのことで、戦いと穀物・食・蓄財の神とされる。

5 諸尊像

 ・十六羅漢  お釈迦様が亡くなる前に枕元に呼び、遺言した者達のこと。

 ・道祖神   外から入ってくる疫病や悪霊・災いを防ぐために峠や村境などに祀られている。

 ・祖師像   仏教宗派開祖たちの姿を現した像のこと。

 このようにたくさんの仏像が存在します。仏像はあまりにも美しく美術品として見てしまいがちですが、あくまでも祈りの対象ですのでそのことを忘れないでください。

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