第六回コラム「お浄土について」

大乗仏教における死後の世界について

 

「あの世には極楽浄土がある。」そのような言葉を聞いたことはありませんか?結論から言うと、死後の世界があるかないか、そういうことには一切答えないのが仏教の基本的な態度です。ではなぜ極楽浄土があると言う考えがあったり、お寺や美術館などには極楽浄土の絵が展示されていたりするのでしょうか。今回はお浄土について説明していきたいと思います。

 1 極楽浄土の世界

 2 娑婆世界について

 3 浄土を信じる

 

 1 極楽浄土の世界

 浄土とは文字どおり「浄らかな土地」です。浄土といえば極楽と思い浮かべる人も多いと思いますが、極楽はたくさんの浄土の中の一つなのです。この宇宙にはたくさんの仏様が存在しており、その仏様がそれぞれの「仏国土」すなわち浄土を持っているのです。例を挙げると、阿弥陀仏は極楽世界、阿閦仏は妙喜世界、薬師仏は浄瑠璃世界といった多数の浄土があり、この考え方が大乗仏教なのです。今回は日本で一番有名な極楽浄土について取り上げていきます。

 極楽浄土は阿弥陀様の仏国土で西方十万億の仏土が過ぎたところにあると経典には記されています。そこではいつでも阿弥陀様の説法を聴くことができ、あの有名な観音様も極楽世界の住人なのです。

 

 2 娑婆世界について

 極楽の世界で阿弥陀様が入滅されると、その後を継いで観音様が極楽の仏様になると言われています。阿弥陀様は別名を無量寿仏といい、無量の命(寿)を持った仏様で人間世界の尺度でいえば無限と言っていいほどの長寿の仏様なのです。しかしそれは決して永遠ではなく、永遠に存在し続けるものなどないと言うのが仏教の教えです。

 現在極楽では、阿弥陀様が一手に引き受けて法を説いておられるので、アシスタントである観音様は出る幕がないのです。そこで観音様はわれわれの娑婆世界に出張して来られているのです。「観音経」ではこれを「遊於娑婆世界」といいます。娑婆に来ているのは観音様だけではなく、別の浄土からも菩薩様は来ていて、どこにでもいらっしゃると考えられています。

「観音経」では観音様は三十三身に変身できると言われていて、その人にとって一番良い救いになる人間に変身して教えを説かれるのです。観音様が娑婆世界に来る際は、自身ですらも生前に極楽浄土にいたとは知らないので、誰が観音様かわかりません。そこで仏教では全員が菩薩様だと考えています。このように考えれば浄土はわたしたちの故郷なのです。

 3 浄土を信じる

 これまで浄土の世界について話してきましたが、最初に言ったように仏教では死後の世界があるかないか、そういうことには一切答えないと言う考えです。お釈迦様はなぜ人間が死ぬのか、死んだ後どうなるのかを考えるなと教えています。そう言われて考えずにすむ人はどれほどいるでしょうか。強い精神力を養うのが仏教ですが、誰しもがついつい不安になってしまうものなのです。頭では理解できても心が言うことを聞かない、気がつくとまたつまらないことを考えてしいます。そう言う人は自分の帰っていく故郷(浄土)はこんなところだと言う”夢”をみるといいのです。「自分が死んだらあそこに帰っていく、あれが故郷なんだ。」こういったことを考えて書かれたのがお寺や美術館でよくみる極楽浄土の絵なのです。

 そういう夢を持つことで、心が落ち着いて不安がなくなり、優しい気持ちになることができるのです。

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