配偶者の死亡後の手続き
配偶者に先立たれた後、結婚前の旧姓に戻すには「復氏届」を提出します。手続きが複雑なように感じるかもしれませんが、復氏届に裁判所の許可や配偶者の親族の同意は必要なく、本人の意思のみで自由に提出できます。また、提出に期限はありません。市区町村役場に配偶者の死亡届が提出されたあとであれば、いつでも提出できます。
復氏届を提出するにあたり、復氏届と共に戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)と印鑑が必要です。ただし、本籍地に提出する場合は、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)を添付する必要はありません。また、旧姓に戻すと、戸籍は元の戸籍に戻るか、筆頭者となって新しい戸籍を作ることになりますので、どちらかを選択しなければなりません。
新しく戸籍を作る
復氏届には、復氏したあとの本籍を記入する欄があります。「元の戸籍に戻る」を選ぶと、自動的に結婚前の籍に戻りますが、「新しい戸籍を作る」を選ぶこともでき、これを選んだ際には本籍地も自由に決めることができます。
提出すると、配偶者の戸籍から抜けることになります。しかし配偶者の相続人という地位は奪われず、配偶者の遺産を相続する権利は残っています。また誤解しやすいのですが、姓を変更するからと言って配偶者と離婚したわけではありませんので、配偶者の親族(義父母や配偶者の兄弟姉妹)との法律上の関係は変わらず、扶養義務も残ります。配偶者の親戚のことを「姻族(いんぞく)」と言いますが、死亡した配偶者にはもともと親や兄弟姉妹の扶養義務があり、その義務は配偶者が死亡したあとでも姻族であるため残るのです。もし死亡した配偶者の姻族と法律上の関係を解消したい場合は、別に「婚姻関係終了届」を提出しなければなりません。
なお、一度復氏をすると、二度と結婚後の戸籍に戻ることができないので、手続きは慎重に行う必要があります。
子供の姓を変えるには
復氏届は届出をした本人のみの変更であり、子どもへの影響はありません。よって子どもは、そのまま死亡した配偶者の戸籍に残ることになるのです。
しかし子どもが未成年であった場合、復氏届を提出するなら子どもも一緒に自分の戸籍に移したいと考えるのが一般的なようです。自分と同じ名字を名乗らせたい、自分の戸籍に移したいというのであれば、子どもの名字を変更する許可を取るため、裁判所に申し立てなければなりません。そして、死亡した配偶者の戸籍から離脱させ、自分の戸籍に移すという手続きをすることになります。
申立てに必要なものは、子供の戸籍謄本、父・母それぞれの戸籍謄本、申立人の印鑑です。子供が15歳以上であれば本人が、15歳未満の場合は法定代理人が申立てます。
裁判所の許可審判がおりたら、その「許可審判書」を添えて、親の本籍地か住所地、または子供の本籍地の役所に入籍届を提出し、親と同じ戸籍・同性にしましょう。