頭巾(ずきん)
頭巾は室町時代、僧侶の被り物として発達を始めますが、その流行は江戸時代に入ってからのことです。江戸初期に多く用いられた男性のものには、丸頭巾、角(すみ)頭巾、苧屑(おくそ)頭巾があります。丸頭巾は後世になると、福の神の大黒天の像から大黒頭巾といわれますが、現存する最古のものは、徳川美術館(名古屋)にある徳川家康所用の縮緬(ちりめん)製の丸頭巾と言われています。角(すみ)頭巾は角(つの)頭巾ともいい、長方形の布を二つ折り矩形(くけい)にしたもので、左右の角(すみ)を折ると角(つの)となるところからそうよばれ、下僕などの下級の者が浅葱(あさぎ)や茶褐色に染めて用いりました。長方形の後ろに、長く折り曲げたものが投(なげ)頭巾です。苧屑頭巾はその文字のように、麻を使ってつくられた頭巾です。
お釈迦様が頭を剃った時、衣で頭を覆ったのが頭巾の始まりであろうとも言われているそうです。
醍醐味(だいごみ)
「醍醐味(だいごみ)」とは「物事の本当の面白さ」を意味する言葉で、仏教では「最上の教え」を意味します。「仕事の醍醐味」や「趣味の醍醐味」など、物事の真の面白さを表す状況で使います。
「醍醐味」の語源は仏教用語にあります。仏教では牛や羊の乳を精製する過程を「五味(ごみ)」と呼び、5つの段階に分けていました。最初の段階である「乳(にゅう)」から「酪(らく)」、「生酥(しょうそ)」「熟酥(じゅくそ)」へ変化するたびに質も上がり、最終段階である「醍醐(だいご)」は最上の味を持つとされています。
「醍醐」が最上の味であることから、仏教の教本では「最上の教え」を「醍醐」で例えるようになります。最上の味、最上の教えという意味が転じ、現代の「本当の面白さ」という意味で醍醐味が使われるようになったのです。
呂律(ろれつ)
舌が回らず、言葉がはっきりしないことを「呂律が回らない」などといいますね。仏教では、お経に節をつけて唱えることがよくあります。これを声明(しょうみょう)、あるいは梵唄(ぼんばい)といいます。現代風に例えると仏教音楽でしょうか。
この仏教の声楽、声明(しょうみょう)や雅楽が関係します。音階に三種あり、それは、呂曲(りよ)と律(りつ)曲と中(ちゆう)曲と言います。そこから、呂律は声明の調子、音の調子、旋律という意味になりました。この声明は、時代を経て、平曲(平家琵琶)・御詠歌・浄瑠璃・義太夫・長唄・音頭、はては演歌を生み出すことになります。日本音楽の源流といえるようです。
そこから、呂律は「りょりつ」から「ろれつ」に変化し、言葉の調子という意味になったようです。