鎌倉時代に日本へ伝わり定着した新しい仏教の中で、「念仏」を唱えて仏様に救済を求める浄土教と双璧をなしたのが、ひたすら坐禅(ざぜん)を組む「禅宗(ぜんしゅう)」です。
浄土教が「他力本願(阿弥陀仏の救いの力に全てを委ねる)」であったのに対し、禅宗は全く逆の「自力(じりき)」を重んじました。自分の心と向き合い、自らの力で悟りを開こうとするストイックな教えは、常に死と隣り合わせだった当時の武士たちから強い支持を集めました。
本コラムでは、現在世界中で「ZEN」やマインドフルネスとして親しまれている禅宗の基本と、代表的な3つの宗派について解説します。
禅宗の基本的な考え方
禅宗の最大の特徴は、経典を読んだり呪文を唱えたりするよりも、ただ静かに座る「坐禅」を最も重要な修行と位置づけている点です。
「私たちの心の中には、生まれながらにしてすでに清らかな仏の心が備わっている。坐禅を通して心の雑念を取り払えば、その仏の心に自ら気づくことができる」というのが禅宗の基本的なスタンスです。師匠から弟子へと、言葉ではなく心から心へ直接教えを伝える(以心伝心)ことも大切にされています。
坐禅へのアプローチで分かれる3つの宗派
日本の禅宗は、主に以下の3つの宗派に分かれています。同じ坐禅でも、悟りへのアプローチや実践方法に明確な違いがあります。
1.臨済宗(りんざいしゅう)
開祖: 栄西(えいさい)
特徴
「公案(こうあん)」と呼ばれる、答えのないなぞなぞのような問答を師匠から与えられ、坐禅を組みながらその答えを必死に考えるスタイルです(例:「両手を叩くと音がするが、片手ではどんな音がするか?」など)。壁の方を向かず、部屋の中心に向かい合って坐ります。鎌倉幕府や室町幕府の上級武士たちに好まれました。
2.曹洞宗(そうとうしゅう)
開祖: 道元(どうげん)
特徴
臨済宗のような公案(なぞなぞ)は使わず、「ただひたすらに坐る(只管打坐:しかんたざ)」ことを徹底するスタイルです。「坐禅をして悟りを開く」のではなく、「無心に坐禅をしている姿そのものが、すでに悟りである」と考えます。壁に向かって面壁(めんぺき)で坐るのが特徴で、地方の武士や一般庶民に広く普及しました。


