今回のテーマは「法話:誰かに頼る事の大切さ」です。
ご覧くださいませ。
法話:小池陽人の随想録「誰かに頼る事の大切さ ~自立とは依存先を増やすこと~」
心理学者のブレネー・ブラウン氏は十八歳から八十七歳までの様々な立場に置かれた世界中の人たちの体験談を十年以上にわたって聞き取り、人間の行動パターンを調べました。
彼女の膨大なデータが示していたのは、どれだけ弱点があっても、境遇に恵まれなくても、そのようなことには関係なく、生き生きと充実した人生を送っている人たちが世界中にいるということでした。
そしてそのような彼らに唯一共通している点は、「自分はありのままで愛される価値がある、と信じている」ということだったと言います。これは、人間も含め、生きとし生けるもの皆にとって、自分自身が最も尊い存在だと説いた釈尊の「天上天下唯我独尊」の教えに通じるように思います。
天上天下唯我独尊とは、どのような存在も、この世に生まれた瞬間に、かけがえのない命であるということを認めることだと思います。立場や能力や家柄など、すべて関係なく、尊い命だということを認め合うことだと思うのです。
この大前提が抜け落ちてしまうことで、様々な問題が起きてしまうのではないでしょうか。
少し前になりますが、小学四年生の栗原心愛(みあ)ちゃんが、父親の虐待によって亡くなった事件がありました。
食事を与えず、冷水を浴びせるなどして死に至らしめました。
あまりに卑劣な事件であり、心愛ちゃんのその時の恐怖心を想像するだけで、言葉を失います。
ニュースでは、そのような命の危険があるにも関わらず、心愛ちゃんを自宅に帰した児童相談所の問題点が指摘されていました。児童相談所の対応のまずさはたしかにそうだったかもしれません。
しかし、そこで働く職員の人数や労働時間、労働環境、十年前に比べて十倍以上にも増えた虐待による通告件数を考えると、児童相談所だけに責任を負わせて、解決する問題だとは思えません。
心愛ちゃんの父親は、職場では勤務態度も良く、とても虐待をするような人には見えなかったと言います。あくまでも私の想像ですが、この人は立場によって態度を変えるところがあったのではないでしょうか。
職場では、低姿勢である反面、家に帰ると立場の弱い子供を虐待してしまうところから、そう見受けられます。親と子どもという関係の前に、子どものことを、一人の尊い存在として認めることが出来ていたらと思わずにはいられません。
子どもは親の所有物ではありません。
親であれば我が子に対して「このように育ってほしい。」と思うのは当たり前です。しかし、この思いが、いつしか子どもを「自分の思い通りにしたい。」という思いに変化してしまう危険性が誰しもあるのではないかと思います。
「こうでなければいけない。」という思いが強ければ強いほど、その危険性は高まります。
理想を高く持っている人ほど、失敗を許せないこだわりの心が強くなり、執着心を生み、それが自分を苦しめてしまう原因になることは多いと思います。
そうした生きづらさの問題は、こだわりの強さ以外に、もう一つ、自分の弱さを外に出せないことにあると思います。
現代は、非常に便利になり、人とかかわらずに暮らしていけるようになりました。
インターネットを使えば、一歩も外に出ずに、買い物ができてしまう時代です。この便利さは、煩わしい人間関係を無くしてくれました。お金さえあれば、自分ひとりで生きていけてしまうのです。
そのような社会においての「自立」の意味は、「誰にも世話にならずに生きていくこと。」というような意味になっているように感じます。
多くの人の中に、「誰かに助けを求めることは恥ずかしいこと」という潜在意識が存在しているのではないでしょうか。貧しかった時代は、「苦しい時はお互い様」で、皆が互いに支え合いながら生活していたと思います。
人と人との繋がりが生きていく力となっていたのです。
現代は、便利さと引き換えに、その繋がりを失い、苦しみや辛さを共有できる存在がおらず、それが社会的孤立を生み、自殺や虐待などの問題の大きな要因になっているように思えてなりません。
精神科医の松本俊彦さんは、「自立とは依存しないことではなく、依存先を増やしていくことだ。
歯を食いしばって、誰にも泣き言を言わずに一人で頑張ることが自立ではない。
できるだけサポーターをたくさん作ることこそが本当の自立なんです。
そして、最大の自傷行為は何かというと、『助けを求めないこと』なんです。」とおっしゃっています。
私たち一人一人が、それぞれの弱さを隠すことなく、周りに支えあえる人たちを増やしていく。
そうすれば、支える人も支えられる人も、お互いに自分はありのままで愛される価値がある、と信じられ、生き生きと充実した人生につながっていくのではないでしょうか。
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※こちらの記事は、小池陽人様から許可を得て転載させていただいております。
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