【文化時報提供】仏教は心の病院 生の意義は死から

仏教は心の病院―。そのたとえが腑に落ちたという僧侶が、宮城県にいる。仙台市宮城野区の浄土宗慈恩寺住職、樋口法生氏。東日本大震災で多くの犠牲者を出した石巻市の出身で、10年近く遺族らに寄り添ってきた。「仏教は、待つ宗教。生きることで苦しみを感じた人を、いつでも受け入れる」。生きる意義は、死と向き合うからこそ見いだせるという。(大橋学修)

死者は守られないのか

樋口氏は、石巻市の西光寺住職の次男として生まれた。学校の教師になる夢を持っていたが、「仏飯をいただいて育った上は、僧侶の資格を取って恩返しすべきだ」と父に説得され、大正大学仏教学部に進学した。父は前々住職の養子で、市役所職員や新聞記者として働きながら寺を守っていたという。

「他のこともしてみたい」。そんな煮え切らない思いを抱えたまま、伝宗伝戒道場=用語解説=に入行。その直前、友人の運転する車で事故に遭い、重傷を負った。命を失ってもおかしくない大事故。「自分は守られた」と、人知を超えた存在からの恩恵を感じた。

しかし、その思いは、東日本大震災を経験したことで、大きく変容した。

石巻市内では多くの人々が身近な人を失い、住み慣れた家屋を流された。火葬場は使えず、移動もままならない状況で、遠く離れた別の火葬場に行かなければならなかった。土葬を余儀なくされる場合もあった。

どのように生きればいいのか。誰もが真っ暗闇の中にいた。「命が助かった。信仰していたから守られた」。そんな声も聞いた。

すると、疑問が湧き起こった。亡くなった人は・・・

 

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