第七十六回コラム「仏教用語について part18」

皮肉(ひにく)

 

 皮肉という言葉には、主に2つの意味があります。「人を意地悪く遠回しに非難すること」もう1つは、「思ったとおりにならないことを嘆く様子」を表します。皮肉という言葉は、仏教のとあるエピソードから生まれた仏教用語です。

 皮肉は、中国禅宗の達磨大師の「皮肉骨髄(ひにくこつずい)」が語源です。「皮肉骨髄」とは、「我が皮を得たり」「我が肉を得たり」「我が骨を得たり」「我が髄を得たり」と大師が弟子たちの修行を評価した言葉です。骨や髄は「要点」や「心の底」の喩えで「本質の理解」を意味し、皮や肉は表面にあることから「本質を理解していない」といった非難の言葉でした。そこから、皮肉だけが批評の言葉として残り、欠点などを非難する意味で使われるようになったそうです。

律儀(りちぎ)

 

 律儀とは「きわめて義理堅いこと。実直なこと」という意味ですが、この言葉も仏教から来ている言葉です。仏教用語として読む場合「りつぎ」と読みます。

 仏教には戒律という言葉があり、「戒」と「律」は別の意味を表しています。「戒」は仏教徒として守るべきもので、仏前勤行次第にも十善戒というものが書かれています。平たく言えば努力目標ですが、「律」は仏教教団の決まりのことで、絶対に守らなければいけません。もともとは仏教教団の決まりをしっかりと守って破らない人が「律儀な人」ですが、それが一般にも広がって義理堅い、実直な人に使われるようになりました。

殺生(せっしょう)

 

「そんな殺生なことは言わないで」など殺生はかわいそうなこと、むごいこと、残酷なことを意味する日常語です。

 仏教では、生き物を殺す罪を殺生罪と言い、仏教の戒では一番重い罪とされています。人間は動物を食べるのを当たり前だと思っています。しかし食べられる動物たちは決して、当然とは思っていません。お釈迦様は、すべての生命は平等であり、上下はないと教えられています。人間の命だけを尊いと考えるのは、人間の勝手な言い分です。殺生は恐ろしい罪に変わりはありません。

 また殺生には3通りあり、それぞれ 1、自殺 2、他殺 3、随喜同業(ずいきどうごう) に分けられます。

1 自殺

  ここでいう自殺とは、首を吊って死ぬような、自ら命を絶つことではなくて、自分が直接生き物を殺すことです。

2 他殺

  他殺とは、自分は直接殺さなくても、他人に命じて殺させる殺生のことを他殺といいます。

3 随喜同業(ずいきどうごう)

  随喜同業とは、他人が殺生しているのを見て楽しむ心があれば同じ殺生罪になります。

  例を挙げると鳥を食べながら「おいしい」と思ったら、鳥を自分が殺したのと同じ罪になります。

 こうしたことから仏教徒は肉や魚を使わない精進料理を食べるようになり、現代でも精進料理は修行中のお坊さんなどによって食べられています。

 

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