第七十五回コラム「仏教用語について part17」

阿吽(あうん)

 

 阿吽の由来はサンスクリット語です。サンスクリット語とは梵語(ぼんご)ともいわれ、古代インドを発祥とし、仏教の伝来とともに中国から日本に伝わった言葉です。サンスクリット語の「あうん」という音を漢字の「阿吽」にあてはめた音訳のため、不思議な漢字になっているのです。

「阿吽」は仏教用語の『真言』(しんごん)で、万物(宇宙)の始まりと終わりを象徴するものとされていました。「阿」は口を開いて最初に発する音であり、「吽」は口を閉じた時の最後の音であるからです。そこから万物の始源と終極を象徴するものとみなされました。一般には呼気と吸気にあてて〈阿吽の呼吸〉といい、お互いの微妙な調子をさします。

 また、『真言』とは「仏の真実の言葉、秘密の言葉」という意味で、言葉に霊力が宿っているとされています。

 

韋駄天(いだてん)

 

 韋駄天とは、そもそもは仏教に登場する神様の名前です。仏教の世界では天部というところに属していて、「韋蛇」「韋天」とも呼ばれます。しかし、もともと仏教の神様だったわけではなく、元はヒンドゥー教のスカンダという神様が仏教に入ったことで「韋駄天」と呼ばれるようになったとされています。

 そして、現代において足の速い人のことを韋駄天という風に呼ぶことがありますが、「韋駄天=足の速い人」というのは、神様の韋駄天にまつわる話で、お釈迦様の骨を盗んだとても走るのが速い鬼を追いかけて捕まえたのが韋駄天で、それを「韋駄天走り」というようになったことがきっかけと言われています。

 

天邪鬼(あまのじゃく)

 

  天邪鬼とは、他者の思想が正しい事を理解した上で、あえてそれに逆らうような言動をするような人のことを意味しています。本来は日本の妖怪の一種であり、人の心を読み取って悪戯を仕掛ける小鬼のことを「天邪鬼」と呼んでいました。

 仏教用語としては、人間の煩悩を表す象徴として表現されることの多いものです。四天王や金剛神によって踏みつけられている鬼のことを「天邪鬼」と呼んだりしています。また、神話の世界では、天の神様である天照大神に遣わされた天稚彦や女神の天探女に由来しているとも言われています。

 これらの神は天から遣わされたのにも関わらず、務めを忘れて「天(天照大神)の邪魔」をしたことから、本来は神様であるにも関わらず「天邪鬼」と呼ばれるようになったと言われています。

 このように、由来については様々ですが、現代では、天邪鬼というのは、人に逆らうばかりで素直ではない人のことや、相手の言動が正しいと理解した上で、あえてこれに逆らうような言動を取るような人のことを指して使用します。

 

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