【わたしの終活スタイル】医療・介護の現場の実情

『お寺の窓口』で発信すべきか迷ったのですが、緊急事態といえる状況に入った中、1人でも多くの方に医療崩壊がどう起こるのかを知っていただきたく、私の経験からお話ししたいと思います。

連日の新型ウィルスについての報道や、外出自粛要請などで不安やストレスが増している中の志村けんさんご逝去のニュース。更には今日にも緊急事態宣言が発令されるであろう状況。
皆さまそれぞれにショックを受けると同時に、このウィルスの怖さを感じていらっしゃると思います。
コロナに関しては、私もメディアで初めて知ることばかりですし、志村けんさんをはじめ、このウィルスによって亡くなる方がいらっしゃるので、終活の必要性をお伝えする立場でありながらも「だからウィルスに気をつけましょう」とか「いつ死ぬか分からないから終活しましょう」などと安易には言えない…と思っています。

ただ…、
「感染」は本当に怖いということは、私自身の経験からお伝えできると思うので、コロナとは少し別の側面からお話しさせてください。

数年前、高齢者施設の常勤介護士として、バリバリ夜勤に入っていた頃のこと。
忘れもしないクリスマスの夜勤で夕食の食事介助をしていたおばあちゃんの咳が気になりました。そのおばあちゃんは認知症でしたが、お喋りが大好きな方なのにその日は発語がなく、どことなく元気も食欲もない。
咳もしてるし、早めに横になった方がイイと判断。
自力ではベッドに移れないので抱き抱えて車椅子からベッドに移乗(現在の位置から別場所に移る)介助をしました。
時間が経つにつれ、おばあちゃんの咳は酷くなり、
気になっていた私は夜中に何度も熱をはかったり
ちょくちょく様子を見に行ったりしていました。
夜中は平熱だったのですが、明け方になって突然の38度8分⤴️(この急上昇は忘れられません)
看護師さんに報告し、すぐにインフルエンザの検査。
私が他の利用者さんのオムツ交換をしている中、看護師さんがやってきて「治美さん(私)…○○さん陽性(インフルエンザの)が出た…」と。
この施設では、利用者様のインフルエンザ感染が分かったら対応した職員はすぐに予防のためにタミフル(インフルエンザ治療薬)を
服用します。

当然、夜勤中ずっとマスクしてたし、手洗いうがいも徹底していたので「大丈夫だよね…わたし」と思っていました。

翌日が休みで、仲の良い友達とイベントに行き、終わってから一緒に居酒屋へ。
快調に飲んだ翌日はまた夜勤。
夜勤に入って前半は何ともなかったのに、深夜になって突然の悪寒((+_+))
おかしいなぁ…と思いながらも、だましだまし体を動かしていましたが、早朝になって関節という関節が痛くなり、利用者様の起床介助ができなくなりました。
その時点では体温を測っても平熱なので「まさかインフルじゃないよね…(;’∀’)」と言いながら
身体のダルさと痛みがハンパなくて…「これは尋常ではない」と思って、申し訳なさいっぱいでしたが、その翌日の勤務を代わってもらいました。
帰りがけに念のため病院にも行きましたが「タミフル飲んでるならココで出来る治療はないよね」と言われ、帰宅しましたが、帰宅後寝ている間に高熱発熱(>_<)
症状は完全にインフルエンザでしたが、タミフルを先に飲んでいるので検査をしても陰性になるんですって…。
ちなみに、私はこの1か月前にインフルエンザの予防接種を受けてます。

おばあちゃんからインフルエンザをもらってしまったとすれば、多分、顔を近づけたベッドへの移乗時だったと思います。

翌日、この前イベントに一緒に行き、その後一緒に飲んだ友達から「インフルエンザにかかった」とのメールが来て、私からうつしてしまった…とすぐに分かりました。
申し訳ない気持ちでいっぱい…_(._.)_お詫びのしようもない…。
でも自分自身もきつくて…( ノД`)

いとも簡単に、こうして感染していくことを初めて身をもって知りました。
その時は年末年始だったので施設は益々人手不足…(パートさんが来れないので)
私が家でグッタリしている間でも毎日職場から電話がありました。(もちろん心配してくださってのことですが)
「フロア全体でインフルが拡散している」…と知った時の衝撃といったら…(゚Д゚;)

数少ないスタッフも休んでいると聞き、これ以上迷惑かけられないと思い、ようやく解熱した1/2の夜勤に何とか出勤。
念のためもう一度インフルの検査をして陰性なのを確認してから仕事開始。

熱は下がっても、関節痛はバリバリ残っていて…しかも全く声が出なくて、ただでさえ呼吸が苦しい状態ではありましたが、マスク二枚重ねで対応しました。
一緒の夜勤だった男性職員の方が気を遣ってことごとくフォローしてくれて、助かる反面申し訳ない気持ちでいっぱい。

インフルエンザに罹患した利用者さんは同じ部屋に隔離されるのですが、この部屋の利用者さんの介助は、これ以上他の職員に感染しないよう、既に感染して抗体ができてる私が入るのがベスト。
インフルエンザが移ってしまった利用者様は認知症の方が多く、認知症でも、隔離されて部屋から出られないという苦痛は分かるので
介助のために隔離部屋に入った私は
「何でずっとここに?」
「牢屋と同じだ!」
というストレスを受け止めることも業務の1つになります。

「わたしも辛いのよ~」とは言えず(:_;)

これが正しい施設介護の在り方だとは思いませんし、こういう施設ばかりではないと思いますが、利用者さんも職員もバタバタ倒れていくこの事態では、こうせざるを得なかった…と今でも思っています。
いや、本気で辛かったですけど(T_T)

別の介護施設では、ノロウィルスが蔓延し、罹患してしまった職員が人手不足で吐きながら出勤していた…という話も聞きました。

何度も言いますが、施設ではこれが当たり前ではないです。
…が、こういう現実は普通にあります。
コロナウィルスの検査を含め、これに対応している医療従事者の方々も感染されているニュースで知りました。
介護施設でも、インフルエンザという感染が瞬く間に広がり、従事している職員にもうつり、「これ以上拡散したら大変なことになる」と羅患した本人が責任を感じつつも最少人数で利用者の方々の対応をしなければならない状況。

原因や環境、立場の違いはありますが、一経験者として今の医療現場の状況を想うと気が気ではありません。
感染した方に一番近くで寄り添い、手当てをされているお医者様や看護師の方々は、きっとご家族よりもうつる可能性が高いといえるでしょう。

充分に気を付けていても、いとも簡単に感染してしまう怖さや、知らぬ間に人に感染させてしまう可能性医療崩壊はこうして起こるのかもしれない、ということを皆様にも知っていただけたらな…と思っています。

目に見えない敵。
知らぬ間に、自分が感染してしまうこと
自分が誰かに感染させてしまうこと
が大いにあり得る状況です。
「自分は絶対大丈夫」とは言えません。
最大限、リスクは避けましょう。

感染予防は第一に「充分な手洗い」だと言われています。
なぁんだ、そんなこと!?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、コロナに限らず感染症対策には「充分な手洗い」が必要不可欠です。
石鹸で30秒以上(けっこう長いんですよ、この時間)の手洗いを心掛けていただけたらな…と思います。

最後に・・・
今、新型コロナウィルスの対応・治療をされている医療機関は、私がインフルエンザに感染したあの時の施設の状況より、もっともっと大変な状況だと思います。
必死で、いや命がけで誰かを救おうとされている医療従事者の皆様のご無事を祈るとともに、心から敬意を払い、心から感謝するばかりです。

終活スタイルプランナー&介護福祉士 鈴木治美
(Living Proof『わたしの終活スタイル』)

関連記事

  1. ad300x250-2

    【お知らせ】第10回お寺の窓口会in大阪

  2. 【お知らせ】“明日の寺院運営を考える”勉強会のご案内(僧侶および寺族向け)8月22日(木)タイムテーブルのご案内

  3. DSC04414

    ■円東寺-真言宗(豊山派)

  4. 【公開フォーラムの御案内】

  5. ■光福寺-真言宗(豊山派)

  6. ■眞證寺-浄土真宗佛光寺派